『何かを書きたいあなたへ』の書評

『何かを書きたいあなたへ』(内藤みか著)

表紙 タイトル

ここでは、内藤みか氏によります『何かを書きたいあなたへ』のご紹介をします。

内藤氏は、『きみの名も知らない』や『奥さまは官能小説家』など、恋愛小説や官能小説、エッセイを得意とする作家です。また、ケータイ小説の女王とも呼ばれる、プロのケータイ小説作家でもあります。

そんな内藤氏のもとに寄せられる相談で最も多いのが、「文章を書きたいんだけど、何を書いたらいいのかわからない」という内容だといいます。

「本を書きたい」、「モノカキになりたい」、けれども何を書いたらいいのかわからない、というわけです。

これに対して、内藤氏は分析をされています。

何を書いたらいいかわからない、という「何」には、二つあります。ひとつは、「どんなテーマを書いたらいいのかわからない」ということ。(中略)そしてもうひとつは「どの表現形式で書いたらいいのかわからない」ということです。(p2~3

本書は、こうした悩みに対して丁寧に答えてくれます。特に、後半では、同じシチュエーションのテーマを、日記、メール、作文、ブログ、エッセイ、小説、ケータイ小説、官能小説と、次々と書き分けるという実践例が示され、それぞれの文体の特徴がわかるとともに、自分に適した表現形式を知るのに役立ちます。

 

本書の章立ては、次のとおりです。

第一部 書くべきものは、あなたの中にある。
第二部 文章実践編 いろいろな形に変化する!

 

『何かを書きたいあなたへ』の概要

第一部では、厳しい意見も述べられます。

「いつか宝くじに当たって、豪華なマンションに引っ越すんだ」と夢を見ている人と、「いつか作家になって、印税生活をするんだ」という人との違いは、ほとんどありません。実際に原稿を書いていなければ、どちらもただ単に夢を語って、ソノ気になっているだけの、妄想家でしかないのです。(p24)

といっても、そんな著者も「何か文章を書きたいと思いながら、何を書いたらいいのかわからなかった」という時代があったことに触れられています。そして、そこから、どうやってプロの作家になることができたか、詳しく、赤裸々に述べられます。

また、読書との関係で、「小説を読むのが好きだからと言って、書けるわけではありません」と述べられています。というのも、読むのが好きな人は、むしろ編集者や評論家、書店員、図書館の司書のほうが向いているといいます。

もちろん、作家も大量の本を読みますが、それは、どちらかというと作品を書くための取材のようなところがあるので、純粋な意味での読書家とは違うと言うわけです。

何を書いたらいいのかわからない、という方に対しては、自分年表を作って見ることが提案されています。つまり、自分に書けるテーマというのは、実は、自分自身の中にあるからなのです。

「家族年表」や「恋愛年表」、「仕事年表」といった具合に、小分けした年表を書いてみると、あれこれと書けそうなテーマが次々と浮かんでくるといいます。

さらに、自分へのノルマとして、締め切りを自主的に作ることが必要だといいます。著者も、デビュー前には、いくつかの文学賞などに応募することを目標にして、自分で勝手に締め切りを設定いていたことが述べられています。

自分なりに言わせてもらえば、コツは、一つの締め切りだけに意識を集中させず、いくつもの締め切りを常に貼っておくということです。プロ作家になったらいつもこの状態なのですから、今のうちに親しんでおくのは、潜在意識の刺激にもいいらしいのです。潜在意識も自然と「作家になるために」動き始めていくのだとか・・・・。(p99)

 

第二部では、文章実践編として、あるテーマをもとに、著者が、日記、メール(手紙)、作文、ブログ、エッセイ、小説、携帯小説、番外として官能小説と、次々に書きわけていきます。

こうした技術を身につけていると、書きたいテーマが見つかったときに、「これは、この方法で書いてみるのがいいかもしれない」ということが瞬時に見えてくるといいます。

本書では、「昔、片思いをしていた彼らしき人物を、偶然、駅前のカフェで見かけたものの、声を掛けることが出来なかった」というテーマを使って、さまざまな文体で書き分けられてゆきます。

そして、それぞれの表現形式の特徴や書き方のコツが述べられており、なるほど、と納得させられます。興味を持たれた方は、是非、お読み下さい。