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『きむら式 童話のつくり方』(木村裕一著)
タイトル |
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きむら式 童話のつくり方 |
ここでは、木村裕一氏によります『きむら式 童話のつくり方』のご紹介をします。
木村氏は、『あらしのよるに』シリーズや『オオカミのごちそう』など、300冊以上の子供向け作品を執筆されている著名な絵本・童話作家です。
本書では、こうした経歴をもつ木村氏から、童話作家を目指す方々へ、童話を書くためのコツが公開されています。非常に示唆に富んだ内容となっており、小説など、童話以外の作品にも応用できます。
最初の章題が、「この本を読めば、明日から、すぐに童話作家になれる。そして、世界であなたしか書けない一冊を書くことができる。」となっていますが、まさに、この言葉にふさわしい内容だと言っても過言ではないでしょう。
読んでいるだけで、自分にも童話が書けそうな気になるし、実際、書きたくなってくるから不思議です。実践に裏打ちされたノウハウや心構えが、著者の作品をもとに具体的に綴られているからでしょう。
本書の章立ては、次のとおりです。ただし、本書では、第何章という形式は取られておらず、見出しがあるのみです。
●この本を読めば、明日から、すぐに童話作家になれる。そして、世界であなたしか書けない一冊を書くことができる。
●絶対書ける「方法」
●トレーニングルーム
●童話の「質」とは何か
●「子供」
●「あらしのよるに」という実験
●童話作家の条件
●ミリオンセラー作家になる方法
●童話哲学
●「エネルギー」と「方法」
『きむら式 童話のつくり方』の概要
ここでは、特に文章術に関する「絶対書ける『方法』」の章を中心にご紹介します。
まず、発想についてです。作品の発想は日常の中から生まれるといいます。日常のふとしたおもしろい気づきを、片っ端からメモしておき、それを育てて、作品へと結びつけるというわけです。その気づきは自分の日常から生まれたものなので、自分にしか書けない作品が出来上がることになります。
作品のテーマに関しては、それを全面に出さないことではじめてテーマになるといいます。一番肝心なところを書かずに、周辺を書くことによって、読者はその部分を心で感じてくれることになります。
キャラクターに関しては、次のように述べられています。
「童話の世界のキャラクターというのは、鍋でも野菜でも動物でも人間でも虫でもなんでもいい。なんでもいいんだけれども、問題なのは、ほんとにいるかのように書くということである。」(p35)
童話の世界では、こうした変わったキャラクターが登場しますが、要するに、こうしたキャラクターを通して人間を描いているわけです。オオカミは怖くて強い人間を、うさぎは可愛くて臆病な人間という具合に、個性的な人間を象徴化させているのです。
次に、童話の構成に関してですが、著者は「起・承・承・承・転・結」が重要だと言います。通常の小説であれば「起・承・転・結」が基本となりますが、こと童話に関しては、“承”が繰り返されます。
これは、有名な童話を思い出してみると良く分かります。物語の中に、必ず繰り返しの部分がでてきます。同じようでありながら、微妙に異なる話が繰り返されるところにポイントがあるといいます。
桃太郎で言えば、イヌ、サル、キジが登場するくだりです。こうした、同じような話でありながら、少しずつ異なるところが子供にとって楽しいのです。
そして、物語のクライマックスでは、次の点に注意するようアドバイスされています。
「一番感動するところほど力を入れて、たくさん書こうとするのが人間の性ではあるが、そこをいかに書かないかが、実は決め手になるのである。」(p51)
他にも、示唆に富んだことが数多く書かれていますので、童話作家を目指されている方には是非とも読んで頂きたい本です。
最後にひとつ、童話の心構えです。
「安っぽいお子様ランチをつくるつもりでつくったら、童話はいいものは書けない。書いているのは大人なのだ。大人のボクが自分の日常の中で、真剣に感動したり発見したりしたもの。それらに正面から取り組んでお話をつくり、最後にそれを子供にもわかるような文字と文を探して表現する。それは本物のいいステーキを、子供の口に合うように小さく切ってあげるようなものだ。本物のステーキの味をちゃんと子供にも与えるのが、本来の童話だと思う。」(p117~118)