『新人賞を狙える小説プロット実戦講座』の書評

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『新人賞を狙える小説プロット実戦講座』(若桜木虔著)

タイトル
新人賞を狙える小説プロット実戦講座―作家デビューしたい!

ここでは、若桜木虔(わかさきけん)氏によります『新人賞を狙える小説プロット実戦講座』のご紹介をします。

若桜木氏は、読売文化センター町田、NHK文化センター町田で小説家養成講座の講師を務められ、これまでも多数のプロ作家を生み出したという実績をお持ちの方です。

本書では、そのタイトルからも窺えるように、新人賞を狙うために欠かせないプロット作成に関する極めて実戦的なテクニックが公開されています。

文学賞や新人賞の入賞を通して作家デビューを目指しておられる方にとっては、極めて重要な内容が明かされており、是非とも読んでもらいたい指南書の一冊です。まさに“目から鱗”状態になるかもしれません。

本書は、著者と小説家養成講座の受講生の方々との間で交わされた談話をもとに書き下ろされたもので、具体的で読みやすい内容となっています。

 

本書の章立ては次の通りです。

第1章:あなたの応募作が予選落ちする理由
第2章:新人賞通過の第一条件
第3章:新人賞選考におけるプロットの意味
第4章:冒頭だけで落とされないためには?
第5章:小説におけるリアリティとは何か?
第6章:新人賞で求められるオリジナリティとは?
第7章:新人賞を狙って、さあ、実戦練習を!

 

『新人賞を狙える小説プロット実戦講座』の概要

ここでは、初心者にとって特に重要だと思われる、第1章から第4章にかけてご紹介します。

第1章では、新人賞の選考に携わる下読みの方々が、どうやって応募作品を選考しているかが明かされます。

下読み委員の選考ギャラは1応募作につき数百円から高くても千円程度だといいます。そして、平均して五百枚の原稿を30分程度で読破しなくてはならない現実があるようです。

したがって、当然のことながらすべての応募作品が精読されているわけではありません。実際には、大部分の作品が冒頭の数ページを読んだだけで、その良否が判断され、そこから先は読まずに落とされることになるようです。

では、どういう基準で作品の良否が判断されているのでしょうか?

著者によると、既視感のある話(どこかで聞いたことのあるような話)は容赦なく落とされるといいます。そして、文章の巧拙が関係してくるのは最終選考の段階であるので、そうしたことにこだわるよりも、プロットや舞台設定、キャラクター設定に注力すべきであることが述べられます。

 

第2章では、予選通過の条件について述べられます。著者はその条件として二つ挙げています。ひとつはプロットの出来栄えです。そして、もうひとつは魅力ある冒頭が書けているかどうかという問題です。

魅力ある冒頭を書くコツは、スリリングなシーンを冒頭に持ってくることだと提案されています。ただし、ここでいうスリリングなシーンというのは、広義に解釈する必要があります。つまり、主人公たちが物理的な意味で危機に陥るというケース以外に、心理的な意味での危機をも含むということです。

他に、スケールを大きくすることによって、ありふれた舞台設定やキャラクター設定の弱点を補強せよ、とも述べられています。

 

第3章では、プロットの具体例を挙げて、その改善点が指摘されます。

例えば、ヒットしている時代小説では、主人公が架空の人物であっても、必ずどこかに歴史上に名の知れた実在人物が配置されているといいます。そこでは、選考委員たちが知っていて、しかも知りすぎていない人物を登場させることがコツだと述べられています。

 

第4章では、予選で落とされないプロットを書くポイントが述べられています。

まず、飛ばし読みされても理解できるように、時系列に沿ったストーリー構成にする必要性があるといいます。

さらに、「この」「その」「あの」といった指示代名詞や指示形容詞の使用は選考委員を混乱させることが多いので、極力控えるべきであるといいます。

そして、既視感をカバーする手法として、選考委員にオリジナリティと受け止められやすいウンチクの利用が提案されています。ちなみに、ウンチクを語ることができれば、受賞後の作家生命も長く持たせることができるといいます。

また、作品中で、主人公に都合の良い情報や状況を簡単に与えてしまうと、作品の評価が極端に悪くなるので、主人公や敵方にも苦労させる必要がある、と指摘されています。

その他、「小説創作におけるリアリティとは?」「新人賞に求められるオリジナリティとは?」といった重要な問題についても触れられていますので、できれば本書を通読されることをお勧めします。