『2週間で小説を書く!』の書評

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『2週間で小説を書く!』(清水良典著)

タイトル
2週間で小説を書く!

ここでは、清水良典氏によります『2週間で小説を書く!』のご紹介をします。

清水良典氏は、高等学校の国語教諭を経て、現在(2016年)は愛知淑徳大学の教授です。「記述の国家 谷崎潤一郎原論」で群像新人文学賞(評論部門)を受賞された方でもあります。

本書では、「2週間で小説を書く!」と銘打ってありますが、それに関して著者は次のように述べています。

「本書が目指すのは、その小説を書けるようになる基礎力、心得やノウハウを、二週間で習得する、ということである。本当はこちらのほうが、ずっと大変で大胆ではないかと思うのだが、ともかくもその目標を二週間でこなせるように編んだのが本書である」(p11)

 

章立ては次の通りです。

第1章:小説の入り口(小説創作の基礎体力を養う)
第2章:小説の中身(内容の吟味と洗練を目指す)
第3章:小説の出発(作家として世に出る道を探る)

 

『2週間で小説を書く!』の概要

では早速、第1章の概略です。

最近の小説を書く人は本を読まないことが多いようですが、それでも小説は書けると言います。ただ問題は、そうした人の場合、その内容がステレオタイプになってしまうというのです。

ステレオタイプというのは、ありきたりで紋切り型のことです。しかも不幸なことに、本人はそれをうまく書けたと思い込んでしまうというのです。

やはり、その人が書けるレベルは、読書レベルとほぼ等しいというわけです。甘くはないということでしょう。

さらに著者は、創作ノートをつくることを勧めています。そこに、ストーリーのアイデアを書く以外に、細部にわたる観察やそれに伴うイメージを書いてほしいといいます。

というのも、小説を書く際に最も大切なことは、具体的な人物や行動、風景を、あたかも目の前にあるかのように再現する力、すなわち<描写力>であるからだといいます。例えば、「かわいい」という言葉を使わずに、その姿や振る舞いでかわいいと読者に思わせることが小説の力であるというわけです。

 

次に、第2章では、小説の中身そのものが吟味されます。まず、ストーリーです。よくできたストーリーは、読者だけでなく作者をも運んで行ってくれるといいます。ストーリーがひとりでに成長するというわけです。

さらに、誘惑されそうになるが、それを使うと魅力が半減してしまうというストーリーの典型的なパターンが五種類挙げられています。確かにその通りだと思います。ここでは割愛しますが、気になる方は本書をお読み下さい。

また、ストーリーに関しては、読者の期待を適度に裏切ることが大切であると述べられています。読者の予想通りの展開になっては面白くとも何ともないということです。

小説が掲げたテーマ(例えば、家族の絆の大切さ、等々)についても同様です。その問題を解決することより、結論に至るプロセスに変化をつけることの方が重要であるといいます。

さらに、キャラクターの問題があります。キャラクターそのものに魅力がなければ小説そのものが死んでしまうというわけです。そのための処方箋として、個性を強調するデフォルメという手法が紹介されています。その他、ネーミングの注意点や登場人物の設定についてのアイデアも解説されています。

 

最後に、第3章では作品の仕上げについて述べられます。

なかなか完成まで至らず、未完の作品ばかりという方には、締め切りの設定が有効であることが指摘されています。それは、新人賞の締め切りでもよく、何が何でも締め切りまでに仕上げて投稿することが大事で、「また来年でいいや」などという考え方ではダメだというわけです。

また、推敲に関しては、書き手が最も得意に思っている部分こそが、欠点となっている可能性が高いという指摘がなされています。自分自身が客観的に見えなくなっている部分でもあるからです。

そして、新人賞を受賞することができれば、いよいよ作家デビューということになりますが、ここからが本当の作家修行の始まりだといいます。新人賞を受賞しても、掲載が約束されるのはせいぜい受賞後の第一作までで、その後は、そうした作品の出来・不出来にかかってくるというわけです。

 

最後に、著者は作家を目指す人に対して、次のようなメッセージを送っています。

「作家を目指す人は、夢を大きく持つのはいいが、成功することだけを夢見てはいけない。むしろ最低の作家生活になったとしても、耐えられる支えを持たなければならない。それには、自分の目指す小説を書きたいという夢があれば十分である。そして、それだけが支えになる」(p219~220)

さらに本書には、“今さら聞けない30の質問”と題したQ&Aコーナーもあり、初心者には特に参考になるでしょう。