著作者人格権について
ここでは、広く著作権と呼ばれるもののなかで執筆に関する部分についてだけ見ておきましょう。
そもそも著作権とは、知的財産権のひとつです。広義の著作権は、著作者人格権と著作財産権の二つからなります。
著作者人格権
まず、著作者人格権についてですが、これは著作者の持っている権利のうちで、人格的・精神的利益を保護するためのものです。これは、次の三つからなっています。
1.公表権
著作者は、未発表の著作物を公衆に公表するかしないか、あるいはどのように公表するかを決定する権利を有します。ただし、すでに公表した著作物に対してはこの権利は主張できません。
2.氏名表示権
著作者は、自分の著作物に対して創作者であることを主張し、自らの氏名を表示することができます。そして、著作者は表示する氏名として、実名を用いるかペンネームを用いるかを自ら決めることができます。
3.同一性保持権
著作者は、その著作物及びその題号(表題のこと)の同一性を保持する権利を有しており、著作者の意に反してこれらの変更や、切除その他の改変を受けない権利です。
要するに、①自分が執筆した未発表の作品をどうやって公表するかは自分で決めることができ、②その作品の創作者として自分の氏名あるいはペンネームを表示することができ、③本人の了承なしに勝手に他人が中身やタイトルを変えることはできません、ということです。
これが、著作者人格権の中身です。
著作財産権について
著作財産権
次に著作財産権について述べておきましょう。これは、その名の通り著作者の財産権を保護するもので、複数の権利からなっています。
1.複製権
著作者は、その著作物を複製する権利を専有(=独占)しています。
2.公衆送信権
著作者は、その著作物について、公衆送信する権利やその公衆送信される著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有しています。
3.口述権
著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有しています。
4.譲渡権
著作者は、映画の著作物を除き、その著作物を、原作品または複製物の譲渡により公衆に提供する権利を専有します。
5.貸与権
著作者は、映画の著作物を除き、その著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有します。
6.翻案権
著作者は、その著作物を翻訳、編曲、もしくは変形、又は脚色、映画化、その他翻案する権利を専有します。
まず複製権に関しては、書籍の最後に次のように記されているのを見たことがあるでしょう。
本書の一部あるいは全部を無断で複写複製することは、法律で認められた場合を除き、著作権の侵害となります。
これが複製権に関する警告なのです。一方、図書館では調査研究を目的とする場合、利用者の求めに応じて、公表された著作物の一部分を一人につき一部複製することが認められています。
また、営利を目的としない教育機関では、学校の担任や学生は授業で使うことを目的とする場合、必要とする限度において複製が認めれれています。こういったケースが、法律で認められた場合に相当するわけです。
公衆送信権では、インターネット上で他人の著作物を無許可で掲載することが著作権法侵害であることを示しています。これは、1997年の改正で明確に規定されました。しかしながら、この点に関しては、守られていないことが多いようです。
では、他人の著作の一部をホームページ上で紹介することはできないのでしょうか? 実は、こうしたときには引用という方法を使うわけです。引用に関しては次項で述べます。
ちなみに、同じく知的財産権である特許権のように、著作権では特に登録する必要はありません。もちろん、登録することも可能なのですが、あまり登録している人はいないようです。
ただし、著作権の譲渡を受けた場合など、後々問題が起きる可能性がある場合には登録しておいたほうが良いのかもしれません。
また、日本では著作権の保護期間が著作者の死後50年間となっています。これに関して、今、欧米並みの死後70年間にすべきではないかという議論がなされています。
※参考文献:『入門 著作権の教室』 (尾崎哲夫著)