『ケータイ小説家になる魔法の方法』の書評

『ケータイ小説家になる魔法の方法』(伊藤おんせん著)

表紙 タイトル

ここでは、伊藤おんせん氏によります『ケータイ小説家になる魔法の方法』のご紹介をします。

伊藤氏は、人気ケータイ小説総合サイト「魔法の図書館」のプロデューサーとして活躍された後、独立してフリーランスの立場で、出版プロデュース、著者マネジメント、執筆、編集等に携わっておられます。

本書には、伊藤氏がこれまでに携わってきたケータイ小説に関するノウハウやケータイ作家たちの生の声が多数収録されています。

 

本書の章立ては次の通りです。

第1章:ケータイ小説の1年間
第2章:書いてみる? ケータイ小説
第3章:ケータイ小説の喜びと苦悩
第4章:ケータイ小説の未来

 

『ケータイ小説家になる魔法の方法』の概要

ここでは、ケータイ小説特有の文章術について具体的に述べられている第2章を中心にご紹介します。

著者から見た、ケータイ小説の全体的な共通点は次のようになると言います。

  • センテンスが比較的短く、かつリズミカルに重ねられている
  • 改行、行間の使い方に独特の間、テンポがある
  • 「会話文」に独白があしらわれ、説明的な文章が少ない
  • カッコなどの使い方に工夫がほどこされている

 

最初の、センテンスが比較的短く、かつリズミカルに重ねられているというのは、携帯電話で読み易くするための工夫であり、ライブ感を出すための工夫でもあります。通常の小説のような長文を用いると、ケータイ上では極めて読みづらくなるのです。

次の改行、行間の使い方に独特の間、テンポがあるという指摘は、ケータイ小説の際立った特徴のひとつです。特に、行間を1行から数行あける手法は、登場人物の心の動きやためらいを表現する上において重要な役割を演じているようです。

さらに、「会話文」に独白(ひとりごと)があしらわれ、説明的な文章が少ないということも通常の小説と異なる部分です。一般的には、綿密な情景描写こそ作家の腕の見せ所であるわけですが、ケータイ小説では、この部分が欠如しています。その分、読者は自由にイメージを膨らませることができるのかも知れません。

最後のカッコなどの使い方に工夫がほどこされているという部分では、書き手によってさまざまな手法が用いられ、特に共通しているわけではありません。

また、擬音の使い方も重要で、書き手の個性が現れるといいます。いかに臨場感あふれる場面を作れるかは、こうした工夫に左右されるようです。

 

ところで、ケータイ小説では圧倒的に恋愛小説が多いわけですが、これはその読者層が中・高校生に集中していることが原因だと考えられます。したがって、男女間の心の動きや駆け引きの妙を書き手がつかんでいるかどうかが、その成否を分けることになりそうです。

さらに著者は、ケータイ小説の非常に象徴的な傾向として、超主観的であることを指摘しています。ケータイ作家の多くは、私やボク、彼、彼女といった表現を使わず、登場人物の名前をそのまま用います。そのため、読者は登場人物と一体となり、同じ視点からものを感じ、見ることが容易になっているのです。

そして、ケータイ作家たちは、主人公である自分を極めて主観的に描きながらも、同時に自分をあたかも天井の上から眺めているかのように描き、微妙な距離感を生み出しているといいます。それも、計算してそのように書いているのではなく、直感的に素直に書いているところがまた素晴らしいと、著者はその魅力を伝えてくれます。

ケータイ小説家を目指している方にとっては、非常に参考になる書籍だといえるでしょう。一読をお薦めします。