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『文章をダメにする三つの条件』(宮部修著)
タイトル |
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文章をダメにする三つの条件 |
ここでは、宮部修氏によります『文章をダメにする三つの条件』のご紹介をします。
宮部氏は、読売新聞社で教育欄、読書欄、文化欄等を担当された後、大学や文化センターで文章講座を教えられた経歴をお持ちの方です。
本書では、宮部氏が大学や文化センターで作文を教えられた経験から、文章を書く際に初心者が陥りやすい三つの悪文パターンを取り上げ、それに対する対処法が解説されています。
したがって、本書の内容は”文章を書くのが苦手な人に対するアドバイス集”と言えるかも知れません。とは言っても、これは誰もが陥りやすいパターンでもあるので、多くの方にとって参考になると思います。
著者は、自らの講義について次のように述べています。
「講義目的としてはあえて掲げていないが、私の真の狙いは、苦手意識のすぐ裏側にある喜び、すなわち文章を書くことで自分自身を見詰め、考え、あらたな自分を発見したときの喜びを味わってほしいということである」(p9)
本書の章立ては次の通りです。
第1章:文章の基本の基本
第2章:基本プラス・アルファー
『文章をダメにする三つの条件』の概要
第1章では、本のタイトルにもなっている初心者が陥りやすい三つの悪文パターンが取り上げられています。
1.文章の意図がつかめない事実や印象の羅列
2.読み手が退屈する理屈攻め
3.読み手の興味をひかない一般論
最初の、文章の意図がつかめない事実や印象の羅列というのは、要するに、書きたいことや思いついたことを手当たり次第に書き連ねてしまう、ということです。では、どうしてこんなことになってしまうのでしょうか?
著者は、自分の書きたいポイントが書いている本人に絞込めていないからだといいます。本当に自分が書きたいこと、訴えたいことが何かを自問するところから始めましょう、ということです。
著者の記者時代の経験から、こうしたポイントをつかむ才に長けているのが作家だといいます。そして、詩人、俳人、歌人と続き、最後に学者というわけです。
次に、読み手が退屈する理屈詰めですが、これは特に抽象的なテーマについて書くときに陥りやすいようです。これは、本当の意味で、自分自身もその内容について良く分かっていないからなのでしょう。
自分が本当によく理解していることであれば、理屈っぽくならずに分かりやすく書くことができるのです。それを誤魔化そうとするところに、問題があるようです。
最後に、読み手の興味をひかない一般論ですが、これもよく陥りがちなパターンです。紋切り型の結論に導いてしまうということです。誰もが思いつくようなことを書いたところで、面白くも何ともないのです。
小説の世界でも同じです。ありきたりのストーリー展開では読者も白けてしまいます。
では、こうした問題はどうして生じるのでしょうか? 著者は言います。結局、人が読んで面白いと思うのは他人の特異体験なのだ、と。つまり、書き手にしか書けないことが分かりやすく書かれているからこそ、読者は面白いと感じるのです。
したがって、個人的な体験を大切にし、鋭い観察をすることによって文章は面白くなるのだと著者は述べています。これについて本書では、さらに具体的にいろいろと述べられています。
第2章では、基本プラス・アルファーということで、よりよい文章を書くためのヒントが紹介されています。著者は、それを“スキ間風の吹き抜ける文章”と呼んでいます。これによって、分かりやすい文章が書けるといいます。
スキ間風の吹き抜ける文章というのは、要するに、主観的な説明をするのではなく、対象をできるだけ客観的に詳しく描写することです。著者は、例として次のような説明をしています。
「花は美しい」と主観的に説明する代わりに「なんの花が、どのような状況の中で咲き、花の色や香りが周囲とどんな風にうまく調和しているか」などを細かく客観的に描写すればするほど、花の美しさは、読む人に伝わってくる」(p127)
本書では、作文の書き方がテーマになっていますが、執筆全般に当てはまる内容でもあり、参考になると思います。