執筆(1)― 文章術の基本

分かりにくい文章の特徴とは?

ここでは、文章術の基本について述べておきましょう。

そもそも、なぜ文章術が必要なのでしょうか? そうした技術的なことをあれこれ言うより、とにかく人を感動させる文章が書ければいいじゃないかと思われるかもしれません。

確かにそうした面もあるのですが、世間には、感動するどころか読めば読むほど不快感やストレスが溜まる文章が結構存在するのです。

それは、ズバリ、分かりにくい文章です。著者が何を言いたいのか、まったく理解できないことさえあるのです。したがって、まずは読者を感動させようとする前に、分かりやすい文章を書こうと心がけることが大切です。

では、分かりにくい文章の特徴とは何でしょうか? ここでは、次の三点に絞って説明します。

  • いつまでたっても終らない、長いセンテンス
  • 複数の解釈が可能な、曖昧な文章
  • スムーズに流れない、ぎこちない文章

最初に、長いセンテンスです。これは要するに、読点(、)ばかりが続いて句点(。)がなかなか来ないという文章です。

<例文1>

その日、わたしは幾分体調を崩していたのだが、あえて自らの怠惰に挑戦してやろうと思い立ち、近所の公園まで散歩することにしたところ、そんな日に限って普段ほとんど来ることのない友人が血相を変えて我が家に駆け込んできたので、「どうしたのか?」と聞くと、何でも彼の妻が消えたと言うのだ。

これは極端な例ですが、意図的に書いているのでない限り、こうした文章はまず分割する必要があります。

<例文1の分割>

その日、わたしは幾分体調を崩していた。しかし、あえて自らの怠惰に挑戦してやろうと思い立ち、近所の公園まで散歩することにした。ところが、そんな日に限って普段ほとんど来ることのない友人が血相を変えて我が家に駆け込んできた。「どうしたのか?」と聞くと、何でも彼の妻が消えたと言うのだ。

ここでは、四分割した例を示しています。一文の中に起・承・転まで続いていたものを、それぞれ分解しています。これだけでも、随分と印象が変わってしまいます。

このように、いたずらに長くなった文章は、短く歯切れよい文章に分割することによって、物語の展開が分かりやすくなります。

 

曖昧な文章とぎこちない文章

次は、曖昧な文章です。

<例文2>

私は銀行で友人が事件に巻き込まれたことを聞いた。

この例文の場合、銀行という場所の持つ意味が曖昧になっています。私が銀行で「友人が事件に巻き込まれた」ことを聞いたのか、それとも、私が「友人が銀行で事件に巻き込まれた」ことを聞いたのかがよく分かりません。

この場合、読点を打てば済む話です。

<例文2に読点を打つ>

私は、銀行で友人が事件に巻き込まれたことを聞いた。
私は銀行で、友人が事件に巻き込まれたことを聞いた。

もちろん、読点を使わずに修正することも可能です。

<例文2の修正>

聞くところによると私の友人が銀行で事件に巻き込まれたという。
私は友人が事件に巻き込まれたことを銀行で耳にした。

最後に、スムーズに流れない、ぎこちない文章です。

<例文3>

私の夢は宇宙飛行士になって、月への人類移住計画を実現させることです。

この文章では、前半と後半がどのような関係にあるのかよく分かりません。そもそも、宇宙飛行士になることと、月への人類移住計画を実現させることと、一体どちらが本当の夢なのでしょうか?

こうした説明不足のケースは、客観的な視点から丁寧に推敲を重ねることによって防ぐことができます。

<例文3の修正>

私の夢は月への人類移住計画を実現させることです。そこで、私は宇宙空間での生活を実体験した上で、より具体的な提案をするため、宇宙飛行士を目指しています。

以上、三つの観点から述べてきましたが、他にも大切な観点はいろいろとあります。当ホームページでは、文章術に関する指南書から学ぶ、文章術コーナーもありますので、是非ご覧下さい。

何れにしても、他の人が読んで理解しやすい文章を書こうと常に心がけていると、おのずと文章力は身につくでしょう。