擬人化を使った執筆テクニックと注意点

擬人化とその注意点

擬人化の目的

童話の中では、人間以外の登場人物が様々に登場し、何の疑いもなく人間と同じように言葉を喋り、日常生活を送ります。それらは、オオカミやキツネといった動物から、植物、鉱物、果ては、フライパンや掃除機といった生活用品に至るまで何でもありです。

あるいは、魔法使いや河童、ユニコーンのような想像上の動物たちも自由自在に登場します。まるで夢の中の世界のようです。そうなんです。童話の世界は、およそ人間が想像できることであれば、なんでも良いのです。

こうした不思議な世界であっても、子供たちには違和感なく受け入れられるのです。これは、本来の人間には、こうした柔軟性ある認識力が備わっているということなのでしょう。ところが、この世に生を受けて人生を送るうち、常識という一定の枠にはまった考え方しかできなくなってしまうのです。

童話作家たちは、ある意味でこうしたこの世の常識と戦っているのかもしれません。擬人化という手法を用いて、こうした本来人間が持っていた自由な発想、想像力を存分に発揮して、子供たちに夢を与えているのです。

擬人化には、こうした自由な発想という観点意外に、執筆テクニックとしての意味合いも含んでいます。実は、こうした擬人化を使うと、キャラクターのイメージが明確になるという利点があるのです。

例えば、ネズミしかでてこない物語では、キャラクターの違いが分かりにくいのですが、そこに、ネコやウサギ、金魚などを登場させると、グッとキャラクターの個性が輝き始めます。

自分を襲う恐ろしい存在としてのネコ、いつもビクビクしている臆病なウサギ、小さな世界から抜け出せない金魚といった具合に、擬人化されたものには、それぞれの性格や特徴が象徴化されているのです。

つまり、そうした動物や昆虫、植物などを使うことによって、ある特定の性格をもった登場人物として理解してもらいやすいのです。このように、擬人化を使えば、外見的な楽しさだけでなく、キャラクターの個性が明確になり、子供にも分かりやすい物語になるのです。

擬人化の注意点

このように、擬人化には、それを通して性格や特徴を象徴化するという目的がある以上、間違った擬人化の設定をしてしまうと、混乱を招くことになります。

例えば、足の速いカメと足の遅いウサギと言う設定で擬人化してしまうと、ウサギとカメの物語のパロディとしては面白いのですが、子供たちにとっては混乱のもとになってしまいます。

従って、擬人化に際しては、誰が見てもある程度納得できる性格や特徴を当てはめる必用があります。

また、擬人化では普通ではありえない状況を描くわけですから、いかにもありそうだ、と思ってもらえるような描き方をしなくてはなりません。例えば、コップを擬人化するのであれば、自分がコップになりきったつもりで、コップの気持ちを考えながら、言葉を考えてみることです。

特に、会話文を通して、生き生きとした存在感を表現するのがコツです。結局、擬人化というのは、人間以外の動物や対象物を使って、個性的な人間を描いていると考えれば分かりやすいでしょう。